乳腺とは
乳房は胸壁の上に位置し、皮膚と皮下組織(脂肪など)、そして乳腺組織から成り立っています。このうち乳腺は、母乳をつくり、新生児・乳児に栄養や免疫機能を与える重要な器官です。
乳腺組織は胎児期の5週目ごろより作られ始めますが、女性では10~12歳ごろから女性ホルモンの分泌が高まり、乳腺組織は成人型に成熟し始めます。閉経とともに女性ホルモンの分泌が減り、乳腺組織は脂肪組織に変化していきます。
乳腺外来とは
主に乳腺に発生する病気の診断・治療を行う診療科です。乳腺には、乳がんを始めとして、幾つかの疾患があり、視診や触診だけでなく、超音波検査やマンモグラフィなどの検査機器を用いて診断します。
なお、乳がんの場合、乳房にしこりが出来ることも多いので、ある程度進行すると、ご自身でも気づくことが出来ます。しかし、初期の段階ではしこりは出現しません。他のがんと同じように、出来るだけ早い段階で発見し、早期治療することで生命予後が増加すると言われていますので、自覚症状が無くても、定期的に乳腺外来にて検査を受けるようにして下さい。
高度医療機関とも連携
当クリニックはマンモグラフィや超音波機器を揃えておりますが、患者さまの症状によっては、専門的な医療機関での治療が必要となることもあります。そのようなときは、適切な医療機関をご紹介いたします。手術の際にも、提携医療機関をご紹介いたします。
乳腺の主な疾患
乳がん 乳房痛 乳腺嚢胞 線維腺腫 葉状腫瘍 乳腺症 乳腺炎 など
乳房痛
乳房に痛みが生じる疾患です。実際に乳房の組織に異変が生じて痛みが発生するケースと、乳房以外の胸壁(筋肉、骨など)が原因の場合があります。
多くの女性が経験している疾患であり、特に月経開始前の1週間はホルモンバランスが変化するため、痛みが強まることが多いです。通常は特に治療は必要ありませんが、痛みが続くときは他の疾患が潜んでいる可能性がありますので、乳腺外来の医師までご相談ください。
乳腺の線維腺腫
乳腺に2~3cmほどのしこりが出来る疾患です。女性ホルモンの影響だと考えられており、閉経後は自然に解消してしまうことも少なくありません。通常は乳がんに変わることもありません。しかし、同じように見えるしこりであっても、葉状腫瘍や乳がんの可能性もありますので、専門医による診察を受けておくと良いでしょう。
乳がん
乳腺組織の乳腺腺房細胞や乳管細胞が悪性化したがんです。周囲の正常細胞を破壊しながら増殖を繰り返し、乳管を伝わって周囲に広がったり、基底膜(乳管の壁)を突き破って周囲の脂肪組織や筋肉に侵入したり、皮膚を突き破って腫瘍を形成したりします。それだけでなく、リンパ管や血管に入り込み、周囲のリンパ節や肺、肝臓、骨、脳などに広がっていくこともあります。
乳がん検診の方法
視触診 超音波検査 マンモグラフィ検診 など
視触診
乳房全体を視診したり、手で触れたりして、乳房や乳頭の皮膚などに異常がないか、しこりが出来ていないかを確認します。しこりの有無や状態を診察する場合、多くの症例を扱っている経験豊かな専門医が行うことも重要です。
医師でなければ発見が難しいしこりもありますので、30歳を過ぎたら、年に一回、専門医による定期的な検診(視触診)を受けることが望ましいです。
超音波検査
乳房に超音波を照射し、乳房内部からの反射波(エコー)を専用機器で画像化し、乳腺の状態を調べる検査です。数ミリの小さなしこりも検出し、その性状を把握することもできます。痛みや被ばくは無く、身体への負担はほとんどありません。
特に30代までの比較的若い女性は、乳腺が発達しているため、マンモグラフィでは乳腺と腫瘍の影が重なることがあります。このようなケースでは、超音波検査が有用です。
なお、この検査では細かい石灰化(カルシウム成分の沈着)などを確認することができません。その場合は、マンモグラフィを併用する必要があります。
マンモグラフィ検診
乳房をX線で撮影できる専門機器を用いて行われる検診方法です。触診では見つけにくい早期の小さな乳がんも感知しますので、乳がんの早期発見に役立ちます。また、良性腫瘍や、悪性・良性の区別がつかないタイプを見つけることも可能です。
乳がんの罹患率は40歳以降に急増するのですが、このがんは早期発見が極めて重要です。そのため、30歳を過ぎたころからマンモグラフィ検診を受けていただくことが望ましいとされています。
なお、当クリニックではマンモグラフィ・超音波機器が導入されていますので、精度の高い検診を受けることが出来ます。